ネットの情報発信のモラル

前回記事のご報告です。
月曜に投稿したこの記事の通り、同日例のサイトに確認文を送りました。
私にしては、結構厳し目の文章です。
というか、私の仕事上、多少見慣れた文章なのですが、それを私用で使うのは初めてです。

するとまもなく、向こうは至急対処する、という事と、その経緯についての説明を送ってきました。
非常識ではなく、まっとうな対処であった事は、正直ほっとしました。

向こうの言い分としては、やはり私の推論通り、外部ライターが著作権に疎かった、という事のようです。
でも、マコちゃんの写真を使って「サマーカットも2週間で気にならなくなる云々」というような創作まで出来てしまう器用さは、著作権以前、ライターさんのモラルや良心にも疑問を抱かざるを得ません。

たぶん、サービス精神旺盛な人なのでしょう。
でもそれは自分の土俵でやるべきで、あまつさえ他人のふんどしを盗って相撲を取ってはいけません。

また、運営側の意識の甘さも垣間見えます。
情報の正確性という点において、一切の検証がされていない事が露見し、同時に情報の入手・制作面のコンプライアンスも確立されていたとは思えない、という実情も浮かび上がるからです。
しかしこれは悲しい事に、このサイトだけの問題ではないのも事実です。

ただこれ以上何かしても良い事は無いので、これでこの件は終わりにしたいと思います。
しかし前回記事での「魚拓サイト」へのリンクは少しの間、残しておきます。

魚拓サイトは、修正される前の、愛ちゃんやマコちゃんの写真を無断使用した状態で証拠保全されているものです。

しかし今は例のサイト本体は修正が施されており、一応謝罪文が載っていますので、これ以上私から他にする必要はないと思います。
これを機に、信頼性のある記事を産む媒体に育ってくれれば、何もいう事はないでしょう。

これから先は、私の思う事をだらだらと書いていきます。
要約すると「大したことは書いてない」です(笑)

■ネットの情報のいい加減さについて

前回記事で少し出てきた「キュレーションサイト」。
良く分からない業界用語と思われた方もいるかも知れません。

簡単にいうと、いろんなカテゴリごとに抄訳をまとめた情報サイト、という事になります。
流行りのいろんな情報、知りたい情報を検索して、いろいろと上位にヒットするサイトの中には、そういう物が多いです。

ただ、そこで掲載される情報の中には、実態として「学生がレポートをコピペでまとめるレベル」に近いものも横行しています。

■ネット上の情報を幾つか繋ぎ合わせて1本の記事にするだけの簡単なお仕事

去年、DeNA傘下の、健康や美容関係のキュレーションサイトがいきなり休止され、世間の耳目を浴びる事になりました。
文章や画像の行き過ぎたキュレーション=パクリが問題となった為といわれています。

記事の多くは外注のライターに任せ、出来高制の報酬体系を採ったために粗悪な記事が粗製乱造される事につながった、とも言われています。
ライターはプロではなく、アルバイト感覚の学生や主婦、フリーターが多かったとも言われていますし、実は私もそういう窓口の名前は幾つか知っています。

おそらく空いた時間に手軽に小遣いを稼げるアルバイトだったのでしょう。
でも、それを読む側は、そのアルバイト達の作る文章を疑いなく受け取る事になります。
しかしそれはある意味、とても危険な事です。

昔から外部で言われていた懸念。
質の悪い、信ぴょう性に欠ける記事が大量に出回る事になって、去年大騒ぎになったわけです。

■猫の情報サイト(キュレーションサイト)について

さて、ここで猫関係のサイトの記事についての意見を書きます。
基本、自分の経験を基に書きますね。

7年前、サイベリアンの里親になった時、ネット上でサイベリアンについて書かれた日本語記事は僅かしかありませんでした。
まず、日本で第一人者的なアルマーズさんのサイトがあり、そこで説明されている文章は今もとても素晴らしいと思っています。
サイベリアンと言う猫への期待を膨らませてくれるものでしたし、しかし一方でサイベリアンはこれだ、という表現は少ししかありませんでした。

で、そこ以外で情報を探すと、ほぼ2~3サイトの情報しかない。
自分も海外サイトで情報を探したものの、英語でも突っ込んだ説明は少ないのです。
これはやはりそのライン(血統)によっても幅がある、という事なのだと気づきました。
確かに、みんな同じ外見や性格なわけはないですし、1匹1匹の個性があるわけですから。

で、自分がサイベリアンについて、という記事を書いた時も、それをやんわりと示唆する書き方にしました。
里親があまりに固定イメージで期待してしまうと、もし想像通りの子ではなかったら、猫が可愛そうな事になりかねない。
(ブランド猫化で喜ぶのは一部の人間だけで、猫にとっては不幸な場合が多いです)

その後2年ほどは、サイベリアンは穏やかに無名の猫種、知る人ぞ知る猫でした。

しかしプーチンさんと秋田県知事の件で、一気に有名に。
私が飼ってる事など知らぬ知人たちが、触った事も無いサイベリアンの話をし始めた時は驚きました。
また当時、2ちゃんねるなどの掲示板にも、うちの愛ちゃん・夢ちゃんの写真がたくさん貼られました。
(ただこれは、それまでずっと写真をブログで発表していたのが自分ですから自業自得、仕方ない事です。)

■猫ブームがきっかけ

そして同じころから偶然にも、世間は猫ブームに突入。
TVCMで猫が出てない日はないくらい、人の視線を集める素材として活用され始めました。

可愛い猫の特集記事でアクセスを集める企画がネットポータルで大流行り。
それから間もなく、猫の解説を主にしたキュレーションサイトが続々と生まれはじめたのです。

それでそうなると、やはり自分の興味はサイベリアンですから、各サイトでもまずはサイベリアンの解説をみます。

そこで一見して笑ってしまうのですが、以前どこかで見たような文章ばかりなわけです。
元々の日本語の情報が、先に述べた通り2~3サイトしかなかったので、その情報をつなぎ合わせて作られた、としか見えないものばかりでした。

専門家も僅かしかおらず、サイベリアンの里親自体がそれほど多くはなく、コネクションもないので記事を書いてもらうのも無理がある。
結局、先行されてる記事をパクるわけです。

笑ってしまうのは、あれ、これ私がブログで書いたヤツじゃん、なんて思う内容も中には紛れていました。
(うちの愛、夢、誠だけをもって、サイベリアンはこういう猫だ、なんていうのは恐れ多い事ですし、私の不用意な発言がサイベリアンへの誤解を生む事だけは避けたいのが本音です。)

で、横行するパクリをさらにパクるキュレーションサイトもまた登場。
コピー情報のコピーがネットに溢れ、よく判らない情報が氾濫する事になるわけです。

情報源が少ないからこそ、こういう事がわかる実例、とでも言うのでしょうか。
でも、飼った事が無い人、専門家でもない人が、学生レポート並みのコピペで解説を書き、それがWEBメディアに載って流されている現実を、多くの人は知っておくべきと思います。

先のDeNAのキュレーションサイトでは、健康情報にオカルトな記事が書かれ、それも炎上の原因のひとつだったとも言われています。

その分野の素人が、素人向けに無責任な情報を垂れ流している。

全部ではないですが、ネットに流れる情報に対しては、そういう視点でも見ておかないと危ない時代と思う次第です。

■ネットには校閲がない

昨年暮れ、石原さとみさん主演のTVドラマ「校閲ガール・河野悦子」で一躍知られる事になった「校閲作業」。
出版と言う活字文化の中での、文字・言葉の重みを維持する地味だけど大事な作業です。

しかしネット情報は、校閲という作業がほとんどないまま公開される事が多いです。
オンラインな情報は、出してもすぐに修正が効くという事情もありますが、情報の重みをあまり考えぬまま公開する人、企業が増えてしまったような気がします。

間違った情報をアップして、それが指摘されるとひっそりと訂正する会社がほとんど。
WEB系の若い会社の中には、ライターの記者一人に一任し、結果開き直ったり居直ったりする事もあるぐらい。

で、校閲に近い事をするにしても...。
グーグル検索して、似たような情報がヒットすれば、それで信ぴょう性や具体性の確認としてしまう。
しかし既存情報がほぼコピーのコピーだったりすれば、大元のネタが間違っていたらアウト、ネットにはガセばかりの情報しかない、という事になります。

■情報は自分で精査する時代

ネットで情報を流す側がいい加減な体制だと判れば、受け手も鵜呑みするような事はなくなります。
ただ全部疑っても疲れるのも事実で、世間一般の話題では、芸能ニュースレベルの信ぴょう性と考えておけば良いのかも知れません。

しかし一方、猫の健康管理や飼い方などの情報は、命を扱うものとして、より慎重に考えねばならないと思います。

出来れば獣医さんのサイトや経験者の話、ペットフード/ペット用品メーカーさんサイトの、獣医監修のついた記事を参考にし、また飼い始めの頃は「ねこの気持ち」などの雑誌を1~2年購読するのも良いでしょう。
(ただし、我が家は大昔にこれを購読したおかげで、十数年後に個人情報が外部漏れしましたけど。ベネッセさんですから)

猫飼いの経験が浅い方なら、サイベリアン特有の、というよりも、まずは猫との付き合い方、猫と言う生き物全般の知識を得るのが大切だと思います。

そして家で昔飼ってた、という人も、知識が古いままでは猫に良い事は少ないので、最新の情報を仕入れるようにして見て欲しいと思います。

私も、知らなくて思わず唸った事はしょっちゅうです。

■他人のブログも参考になるかも

このブログを7年近くやってきて、サイベリアンの里親さんから、飼う前に参考になった、と言われる機会が増えました。
サイベリアンを飼う前に、具体的情報が欲しくて読まれたのだというのです。

その度に、挨拶代わりのお世辞と受け止めて恐縮していますが、他人の苦労とかを知るには、確かに猫ブログは参考になるはずと思います。

うちのブログの場合、自分や猫たちが老いた将来、こんな事があったね、こんなに可愛かったんだね、と読み返すために書いてるので、誇張や嘘はありません。
しかし基本、自分向けなので、読みやすさは度外視して書いてます。

親切ではないですし、記事数も多くなってきたので、読んでも疲れるだけでしょう。

でも私もそうでしたが、ブログのオープンの頃は、ブログ主である里親さんも、サイベリアンは初めて、という方が多いはず。
失敗や苦闘、そして一緒にいる楽しさを、猫ブログのスタートから1年くらいは瑞々しく伝えてくれるので、これからたぶんまた増えるであろう、サイベリアンのブログを参考にされるのは良い事と思います。

■猫サイトは猫を第一に考えて

猫の情報サイトを立ち上げる個人や団体さんの多くは、営利は無視できないにしても、猫が大好きな人が多いと思います。
出来るなら、上辺の話のコピーばかりではなく、猫が幸せになるような、不幸にならないような、そういうガイダンスやコンテンツ作成に力をいれていただきたいと思います。

今後、Googleがキュレーション情報を大幅にランクダウンさせると予告しているので、ある日一気にGoogle八分されるサイトも現れるやも知れません。
単語ごとに解析されてしまえば、てにをはや順番を変えただけでは回避出来ないはず。
そしてまだ先かもしれませんが、画像認識も、キュレーション情報かどうかを判断出来るレベルに至っているはずです。

パブリックドメイン化していると思われる写真を使うのも、今後は危険と言う事です。
そしてWikiに載ってるからと言って本当にパブリックドメインなのかどうかを検証せずに使うと、痛い目に遭う危険も出てくるでしょう。
世界中でコピーされて、作者が抗議を諦めてしまってる、そういう状態をもって著作権放棄やパブリックドメインとみなすのは、いくつもの意味で危険です。

安易に楽に作ろうとすると、いろいろと面倒な事に陥ります。
これからはコンテンツ力が問われる時代。
不毛なコピー合戦の行く末がGoogle八分であることが明白になればなるほど、コンテンツの質、内容の優劣で勝負される時代になっていくように、私は期待したいです。